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物流基礎知識

モーダルシフトとは?メリット・デメリットや企業の取り組み事例を紹介

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物流コストや人手不足、環境問題に悩む企業担当者の方も多いのではないでしょうか。そんな課題の解決策として注目されているのが「モーダルシフト」です。

モーダルシフトとは、トラック輸送を鉄道や船舶などの大量輸送手段に切り替える取り組みで、CO2削減やドライバー負担軽減に大きな効果があります。

本記事では、モーダルシフトのメリット・デメリット、そして企業の取り組み事例をわかりやすく解説します。

モーダルシフトとは

モーダルシフトとは、トラックなど自動車による貨物輸送を、鉄道や船舶といった大量輸送機関に転換することです。「モーダル(Modal)」は「輸送機関・輸送方式」を、「シフト(Shift)」は「転換・移行」を意味する言葉で、直訳すると「輸送機関の転換」となります。

主に長距離の幹線輸送において、CO2排出量の多いトラック輸送から、環境負荷の少ない輸送手段へと切り替えることで、環境保全やドライバー不足の解消、物流コストの削減などの効果が期待できます。近年は、企業のCSR活動やSDGs達成への取り組みとしても注目を集めており、持続可能な物流システムを構築するうえで重要な施策といえるでしょう。

モーダルシフトのメリット

モーダルシフトには、環境負荷の低減からコスト削減まで、さまざまなメリットがあります。ここでは主な4つのメリットについて解説します。

CO2排出量を削減できる

モーダルシフト最大のメリットは、CO2排出量の大幅な削減です。国土交通省の試算によれば、トラック輸送のCO2排出量は1トンキロあたり207gですが、鉄道では19g、船舶では42gと、鉄道は約11分の1、船舶は約5分の1に抑えられます。つまり、輸送手段を鉄道や船舶に切り替えることで、鉄道利用なら約91%、船舶利用なら約80%ものCO2排出量削減が実現可能です。

このような環境負荷の低減は、地球温暖化対策の観点からも極めて重要です。近年、企業活動においては環境配慮が社会的責任(CSR)の一環として強く求められるようになっており、モーダルシフトはその具体的な施策として多くの企業で採用が進んでいます。

特に、CO2排出量削減目標の達成が求められるなか、物流部門でのモーダルシフトは、企業のブランド価値向上や取引先・消費者からの信頼獲得にもつながるでしょう。

参考:環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 - 国土交通省

ドライバー不足問題の解消につながる

深刻化するトラックドライバー不足の解消にもモーダルシフトは有効です。少子高齢化や若年層の就業者減少により、物流業界全体で人手不足が加速しています。特に長距離トラック輸送は、長時間労働や泊まりがけの運転が必要なためドライバーの負担が大きく、人材確保が難しい状況です。

鉄道や船舶を活用したモーダルシフトでは、ドライバーは発地から最寄りの貨物駅や港までの短距離輸送、または到着駅や港から最終目的地までの短距離輸送だけを担当すればよくなります。限られたドライバーリソースを効率的に活用できることから、ドライバーの労働環境改善につながる点もメリットです。

長距離輸送でコストを削減できる

長距離輸送においては、モーダルシフトによるコスト削減効果も期待できます。

トラック輸送では運転距離に比例して人件費や燃料費がかかりますが、鉄道や船舶は一度に大量の貨物を運ぶことができるため、単位あたりの輸送コストを抑えられるのです。特に500km以上の長距離輸送では、トラックドライバーの休憩時間確保や2人乗務体制が必要になるケースが多く、人件費が高騰します。

ただし、短距離輸送ではトラックの方がコスト面で有利な場合もあるため、導入前には自社の輸送距離や貨物量に応じたコスト試算が不可欠です。

SDGsの達成に貢献できる

モーダルシフトは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも大きく貢献します。特に「目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「目標13:気候変動に具体的な対策を」といった環境関連の目標達成に直接的な効果が期待できるのです。

また、「目標8:働きがいも経済成長も」に関わる取り組みとして、ドライバーの労働環境改善や物流の持続可能性確保にもつながります。企業の環境・社会対応への取り組みとしてモーダルシフトを推進することは、企業イメージの向上や投資家からの評価向上にもつながるため、経営戦略としても重要性が高まっています。

モーダルシフトの課題とデメリット

モーダルシフトには多くのメリットがありますが、同時に課題やデメリットも把握することが大切です。ここでは主な5つの課題についてみていきましょう。

輸送時間が長くなる

モーダルシフトの最大のデメリットは、輸送時間の増加です。トラック輸送に比べて、鉄道や船舶による輸送は、発着駅や港までの集配送時間、貨物の積み替え作業時間、鉄道や船舶のダイヤに合わせた待機時間などが必要となります。

また、鉄道や船舶は決められた路線や航路、ダイヤで運行されるため、トラックのような柔軟な輸送時間の調整が難しく、貨物の到着時間が遅くなるケースも少なくありません。特に緊急性の高い貨物や、納期が厳しい場合には、モーダルシフトの導入が難しい場合もあるでしょう。

荷物の積み替え作業が発生する

モーダルシフトでは、トラックから鉄道や船舶へ、またその逆の積み替え作業が必要になります。この積み替え作業には人手と時間がかかり、荷役コストの増加要因になるのが現状です。また、荷物の特性によっては、積み替え時に荷傷みが発生するリスクも無視できません。

特に精密機器や壊れやすい商品、温度管理が必要な生鮮食品などは、積み替え時の取り扱いに注意が必要です。そのため、荷物の種類や性質によっては、モーダルシフトが適していない場合もあります。

短距離輸送ではコストが高くなる

モーダルシフトは長距離輸送ではコスト削減効果がありますが、短距離輸送では逆にコストが高くなる傾向があります。これは、鉄道や船舶の固定費(基本料金)が高く、積み替え作業のコストもかかるためです。

一般的に、モーダルシフトが費用対効果の面で優位になるのは、輸送距離が約500km以上の場合と言われています。つまり、東京〜大阪間(約500km)を境に、それより短い距離ではトラック輸送のほうがコスト面で有利になる傾向があります。

天候不良の影響を受けやすい

鉄道や船舶は、天候の影響を受けやすいという特性があります。特に船舶輸送は、台風や強風、高波などの影響で運休や遅延が発生しやすく、定時性の面で課題を抱えているのが現状です。鉄道輸送も、大雨や大雪、強風などの自然災害により運行障害が発生するリスクを否定できません。

一方、トラック輸送は比較的天候の影響を受けにくく、迂回路の確保も容易という利点があります。天候不良による輸送遅延は在庫管理や生産計画にも影響するため、リスク管理の観点からの対策が必要といえるでしょう。

災害時のリスクが高まる

自然災害が発生した場合、鉄道や船舶は復旧に時間がかかるというリスクがあります。鉄道は線路が被災すると全線での運行ができなくなり、船舶も港湾施設が被災すると使用できなくなるためです。

過去には、豪雨による橋梁流出や地震による路盤流出などで鉄道路線が長期間不通になった事例もあります。災害時の事業継続計画(BCP)の観点からは、単一の輸送モードに依存せず、複数の輸送手段を組み合わせたリスク分散が重要です。モーダルシフトを進める際には、災害時の代替輸送手段の確保も検討しましょう。

モーダルシフト普及に向けた政府の取り組み

モーダルシフトの普及促進に向けて、政府はさまざまな支援策や制度を整備しています。ここでは、モーダルシフト推進に関連する主な政府の取り組みについてみていきましょう。

総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)

「総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)」は、2021年6月に閣議決定された物流政策の基本方針を示す文書です。

モーダルシフトに関しては、持続可能な物流ネットワークの構築に向けた重要施策として位置づけられており、具体的な目標としては、鉄道による貨物輸送トンキロを2019年度の184億トンキロから2025年度には209億トンキロへ、海運による貨物輸送トンキロを同じく358億トンキロから389億トンキロへ増加させることが掲げられています。

2025年度が計画期間の最終年度にあたるため、すでに次期大綱の策定に向けた動きも始まっています。2025年3月には「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」が発足し、物流革新の集中改革期間と位置づけた次期大綱の検討が進行中です。

参考:物流:総合物流施策大綱(2021年度~2025年度) - 国土交通省

2030年度に向けた政府の中長期計画

「2030年度に向けた政府の中長期計画」は、2024年2月に策定・公表された、より長期的な視点を持った物流政策計画です。特に「2024年問題」(トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制)後の物流業界の課題解決に焦点を当てているのが特徴といえるでしょう。

この計画では、2030年度には34%の輸送力不足が予測されるなか、モーダルシフトのためのハード整備やデジタル技術活用など、具体的な施策が盛り込まれています。特に鉄道と内航海運の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増させることを目指す方針が示されており、モーダルシフトを物流革新の中核に位置づける姿勢が明確になっています。

参考:2030年度に向けた政府の中長期計画 (ポイント)|国土交通省

モーダルシフト等推進事業

「モーダルシフト等推進事業」は、企業のモーダルシフト導入を支援するための補助金制度です。物流総合効率化法に基づく総合効率化計画の認定を受けた事業者に対して、モーダルシフトの取り組みに必要な経費の一部を補助する仕組みとなっています。

具体的には、鉄道・船舶の利用促進に要する経費、輸送機材の導入に要する経費、物流拠点の施設整備に要する経費などが補助対象です。この補助金を活用することで、モーダルシフトへの初期投資負担を軽減し、取り組みの促進が期待できるでしょう。

参考:物流: モーダルシフト等推進事業 - 国土交通省

新たなモーダルシフトに向けた対応万策

「新たなモーダルシフトに向けた対応万策」は、2024年11月に公表された、モーダルシフトに特化した具体的施策をまとめた政策文書です。2030年度に不足するとされる輸送力34%の解消をより確実にするための実施方策として位置づけられているのが特徴といえるでしょう。

この対応万策では、①鉄道と内航海運へのモーダルシフトの取り組みの更なる強化、②多様な輸送モードの活用、③地域の産業政策・地域政策等との連携、という3つの方向性が示されています。具体的には、鉄道コンテナホームの拡幅や路盤強化、小口貨物の混載輸送、パレット化の推進などの施策が含まれており、2030年に向けた実行計画として注目を集めています。

参考:報道発表資料:「官民物流標準化懇談会 モーダルシフト推進・標準化分科会」においてとりまとめた 「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」を公表 - 国土交通省

モーダルシフトに取り組む企業事例

多くの企業がモーダルシフトを積極的に取り入れ、環境負荷の低減とコスト削減の両立を実現しています。ここでは、特徴的な取り組みを行っている企業の事例を紹介しましょう。

ヤマト運輸は、従来トラック中心だった九州~関東間の幹線輸送を鉄道へ切り替えることで、年間2,300台分のトラック輸送を削減しました。これによりCO2排出量の大幅削減だけでなく、ドライバーの運転時間短縮にもつなげています。この取り組みは日本物流団体連合会の表彰も受けており、業界をリードする事例として注目を集めました。

参考:ヤマト運輸がモーダルシフト最優良事業者賞(大賞)を受賞 | ヤマトホールディングス

また、飲料メーカーや製紙メーカーの間でも、複数社が協力して鉄道やRORO船(貨物を積んだシャーシごと輸送する船舶)を活用する事例が増えています。例えば、ビールメーカー4社が関東~関西間の輸送を共同で海上輸送に切り替えたケースでは、CO2排出量を約59%、ドライバー運転時間を約77%削減するなど、環境面・効率面で大きな成果が得られています。

参考:モーダルシフトに関する事例(物流総合効率化法の認定事例より)

このように、モーダルシフトは単なる輸送手段の変更にとどまらず、複数企業の連携や新たな輸送スキームの導入によって、環境負荷の低減やドライバー不足対策、物流コストの最適化など、さまざまな課題解決に寄与しています。

まとめ

モーダルシフトは、環境負荷の低減、ドライバー不足の解消、長距離輸送のコスト削減など、多くのメリットをもたらす取り組みです。一方で、輸送時間が長くなる、荷物の積み替え作業が発生する、短距離輸送ではコストが高くなるなどの課題も存在します。

企業の成功事例も着実に増えており、技術革新や社会的認知の広がりにより、今後もモーダルシフトの取り組みはさらに広がっていくと考えられます。持続可能な物流システムの構築に向けて、自社の輸送体制を見直し、モーダルシフトの可能性を検討してみてはいかがでしょうか。

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