
通関とは?手続きの流れや申告方法・必要な書類などを詳しく解説

輸出入ビジネスを行う際や個人で海外から商品を購入する際に必ず関わってくるのが「通関」です。耳にしたことはあっても、具体的にどのような手続きなのか、なぜ必要なのかを理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では通関の基本知識から手続きの流れ、必要な書類、所要時間まで、輸出入に関わる方々に役立つ情報を詳しく解説します。
通関とは
通関とは、貨物の輸出入に際して税関から許可を得るための手続きのことです。海外から商品を輸入する場合や、日本から海外へ商品を輸出する場合には、この通関手続きが必ず必要となります。
ここでは、通関の目的や種類について解説します。
通関の目的
通関の主な目的は以下の3つです。
- 関税の徴収(輸入される商品に対して、適切な関税を徴収すること)
- 安全性の確保(危険物や禁止品の輸出入を防止し、国の安全を守ること)
- 統計データの収集(国際貿易の実態を把握し、貿易政策の立案に役立てること)
通関手続きが完了するまでは、輸入貨物は「外国貨物」として保税地域に保管されており、国内で自由に流通させることはできません。通関手続きを経て初めて「内国貨物」となり、国内市場での流通が可能になるのです。
輸出通関と輸入通関の違い
通関には大きく分けて「輸出通関」と「輸入通関」の2種類があります。
輸出通関は、日本から海外へ商品を送り出す際に必要な手続きです。輸出通関の主な目的は、安全保障上の理由から輸出が規制されている物品の管理と貿易統計の作成です。日本では原則として輸出品に関税はかかりませんが、一部の特殊な品目には輸出税が課されることがあります。
一方、輸入通関は海外から日本へ商品を持ち込む際に必要な手続きです。輸入通関では、商品の価格や種類に応じた関税の徴収が主な目的となります。また、食品衛生法や薬機法など、様々な法令に基づく審査も行われます。
通関手続きの流れ
通関手続きは輸出と輸入で異なる部分がありますが、基本的には「申告→審査→許可」という流れで進みます。それぞれの手続きについて詳しく見ていきましょう。
輸出通関の流れ
輸出通関の基本的な流れは以下の通りです。
- 貨物を保税地域へ搬入する
- 輸出申告を行う ※貨物によっては他法令手続が必要
- 税関の審査・検査を受ける
- 輸出許可を取得する
- 貨物を船舶や航空機に積み込む
輸出通関手続きは、まず貨物を保税地域に搬入し、必要に応じて他法令の手続き(輸出貿易管理令や植物防疫法など)を済ませたうえで税関に輸出申告を行います。その後、税関による書類審査や現物検査を受け、問題がなければ輸出許可が発行されます。許可後、貨物は船舶や航空機に積み込まれて輸出される、という流れです。
輸入通関の流れ
一方、輸入通関は以下のような流れになります。
- 貨物を保税地域へ搬入する
- 輸入申告を行う※貨物によっては他法令手続が必要
- 税関の審査・検査を受ける
- 関税や消費税を納付する
- 輸入許可を取得する
- 貨物を保税地域から引き取る
輸出通関では許可後に貨物を積み込みますが、輸入通関では関税・消費税の納付が必須で、納税後に許可が下りて貨物を引き取るという点が大きな違いです。
通関に必要な書類
通関手続きを円滑に進めるためには、適切な書類の準備が欠かせません。ここからは、通関に必要な書類について解説します。
輸出通関に必要な書類
輸出通関に必要な主な書類は以下の通りです。
- 輸出申告書
- インボイス(仕入書)
- パッキングリスト(梱包明細書)
- 非該当証明書
- 他法令の許可・承認証 ※輸出貿易管理令、植物防疫法など該当時
- 通関委任状 ※初回のみ
- 商品説明資料 ※必要に応じて
輸出通関では、インボイスとパッキングリストが必須書類となります。これらの内容が一致していない場合、税関での審査が長引いたり、追加説明や修正が発生したりするため、書類の記載内容に不備や矛盾がないか事前にしっかりと確認することが大切です。
また、輸出する貨物が輸出貿易管理令やワシントン条約などの規制対象に該当する場合には、関係官庁の許可証や非該当証明書が必須です。通関業者に手続きを依頼する場合は、通関委任状も忘れずに用意しましょう。
輸入通関に必要な書類
輸入通関に必要な主な書類は以下の通りです。
- 輸入申告書
- インボイス(仕入書)
- パッキングリスト(梱包明細書)
- 船荷証券(B/L)または航空貨物運送状(AWB)
- 貨物到着案内書(アライバルノーティス)
- 保険証券 ※保険をかけている場合
- 原産地証明書 ※特恵関税適用時や必要な場合
- 減免税明細書 ※減免税の適用を受ける場合
- 他法令の許可・承認証 ※食品衛生法、植物防疫法など該当時
- 通関委任状 ※初回のみ
- 商品説明資料 ※必要に応じて
輸入通関では、インボイスとパッキングリストに加え、船荷証券(B/L)や航空貨物運送状(AWB)が必須書類です。
貨物到着案内書や保険証券は、貨物の引き取りや損害発生時の対応に必要となる場合があります。食品や動植物、医薬品などの特定貨物については、関係法令に基づく許可証や検疫証明書が必要です。原産地証明書は特恵関税の適用を受ける際に提出を求められます。
書類に不備があると、税関での審査が滞り、貨物の引き取りが大幅に遅延するリスクが高まります。輸入に関わる担当者は、各書類の役割や記載事項を正確に理解し、必要に応じて通関業者と連携しながら準備を進めることが重要です。
通関手続きにかかる時間と短縮のポイント
通関手続きの期間は、貨物の種類や輸送方法、書類の準備状況、そして税関の混雑具合などによって大きく変動します。以下では、通関手続きの所要時間の目安と、手続きを迅速化するための具体的なポイントについてみていきましょう。
通関手続きの所要時間の目安
通関手続きに要する時間は、海上貨物か航空貨物かによって大きく異なり、一般的に海上貨物の輸入通関では1~3日、航空貨物の場合は1日以内で完了するケースが多く見られます。輸出通関の場合はさらに時間を要し、海上貨物で3~5日、航空貨物で1~2日が標準的な所要期間です。
また、税関での審査区分によっても所要時間は異なります。NACCS(輸出入・港湾情報処理システム)を利用した場合、簡易審査であれば短時間で許可が下りますが、書類審査や現物検査に回された場合はその分時間がかかります。検査対象となりやすい貨物や書類に不備があった場合は、追加資料の提出や現物確認が必要となるため、事前にリスクを把握しておくことが大切です。
ただし、これらはあくまで目安であり、貨物の内容や書類の正確性、さらには税関の混雑状況によって大きく変動します。通関手続きの期間は多くの要因によって左右されるため、余裕を持ったスケジューリングが欠かせません。
通関手続きを迅速化するためのポイント
通関手続きを円滑かつ迅速に進めるためには、何よりもまず提出書類の正確性が求められます。インボイスやパッキングリストの記載内容が実際の貨物と一致しているかを事前に確認し、HSコードや原産地証明書に誤りがないかも慎重にチェックしましょう。
特にインボイスの記載ミスは、税関から訂正を求められる典型的なトラブル要因です。輸入の場合、海外の取引先に訂正を依頼する必要が生じるため、時差や担当者の不在などで対応が遅れるリスクも考えられます。
さらに、通関手続きを迅速化するためには、信頼できる通関業者との連携も欠かせません。経験豊富な通関業者は、書類作成のアドバイスや税関との調整、トラブル発生時の迅速な対応など、多岐にわたるサポートを提供してくれます。
通関手続きで遵守すべき法令
輸出入ビジネスにおいて法令遵守は、単なる義務ではなく国際取引の信頼性を担保する生命線です。特に近年は地政学リスクの高まりやサプライチェーンの複雑化に伴い、輸出管理や輸入規制が年々厳格化されています。
ここでは、輸出と輸入それぞれで特に重要な法令の目的・対象・違反時のリスクを解説します。
輸出貿易管理令とは
輸出貿易管理令とは、日本から海外への貨物の輸出を規制するための政令です。大量破壊兵器や通常兵器の開発に転用される可能性のある「特定貨物」の輸出を規制し、国際平和の維持を目的としています。外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づいて制定されており、対象となる貨物は「リスト規制」と「キャッチオール規制」の二重構造で管理されている点が特徴です。
リスト規制では、15項目に分類された具体的な品目(例えば航空機部品や特殊合金)が明示されており、これらを輸出するには経済産業大臣の許可が必要です。一方キャッチオール規制は、リスト外の貨物であっても大量破壊兵器開発に使用される懸念がある場合に適用され、グループA(旧ホワイト国)26カ国以外への輸出時には事前審査が義務付けられます。
違反時の罰則は極めて厳しく、個人の場合10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金、法人の場合は10億円以下の罰金が科されます。輸出者は「該非判定」と呼ばれる規制該当性の判断を必ず実施し、非該当証明書の取得や専門家との相談を通じてリスクを回避することが重要です。
輸入関係の主な法令
輸入通関では、関税法に加えて「他法令」と呼ばれる関連法令の遵守が求められます。代表的なものとして食品衛生法(食品・添加物)、植物防疫法(植物・木材)、薬機法(医薬品)が挙げられ、これらは貨物の種類に応じて事前の許可や検査が必要です。
違反時の対応は法令によって異なりますが、食品衛生法違反の場合、貨物の没収や営業停止、違反業者名の公表などが行われます。輸入者は税関申告前に必ず該当する法令を確認し、必要書類を揃えるとともに、専門の検査機関を活用した事前審査の実施が推奨されます。
通関業者の役割と選び方
グローバルなビジネス展開を進めるうえで、通関業者は貿易の現場を支える重要なパートナーです。ここでは、通関業者が担う主な業務と、選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
通関業者の主な業務内容
通関業者は、輸出入に関わる税関手続きを専門的に代行する事業者です。以下のような業務を担います。
- 輸出入に関する書類のチェックと作成
- 税関への輸出入申告の代理
- HSコード(統計品目番号)の判定
- 関税や消費税など納付すべき税金の計算と納付手続き
- 税関審査や検査への立ち会い・追加資料の提出
- 関税減免や還付、暫定8条など各種制度の手続き代行
- 行政処分への不服申し立てや陳述の代理
- 輸送手段(船舶・航空便)の手配や調整
- コンテナへの貨物詰め(バンニング)や取り出し(デバンニング)の手配
- 国内配送や国際物流のコーディネート
単なる書類作成や申告代行だけでなく、貨物の特性や輸送条件に応じた最適な物流手配まで担う点が特徴です。法令遵守やリスク管理の観点から、通関士による専門的なアドバイスやトラブル発生時の迅速な対応が、貿易実務の現場で大きな安心材料となるでしょう。
通関業者を選ぶ際のポイント
通関業者を選ぶ際のポイントは、以下の通りです。
- 取扱い貨物や得意分野が自社のニーズに合っているか
- 実際に貨物を出し入れする港や空港での対応力・拠点の有無
- 業務範囲(通関手続きのみか、輸送・配送まで含むか)
- 過去の実績や経験の豊富さ
- 費用や見積もり内容の明確さ
- 担当者の専門知識や対応の丁寧さ
通関業者を選ぶ際は、単に費用や知名度だけでなく、自社の貨物や取引条件に適した実績・専門性を持つかどうかを重視することが重要です。特に、食品や医薬品、危険物など特殊な貨物の場合は、その分野での経験や許認可対応力が業務のスムーズさを大きく左右します。
また、港や空港ごとに対応可能な業者が異なるため、実際の物流拠点に強みを持つ業者を選ぶことで、納期やコスト面でも有利となります。
まとめ
通関は単なる手続きではなく、国際貿易の円滑な実施と国の安全保障を両立させるための重要なプロセスです。
特に初めて輸出入を行う方にとっては、複雑な手続きや法令の遵守が大きな負担となることもあるでしょう。そんな時こそ、専門性の高い通関業者のサポートが不可欠です。
後藤回漕店は、通関・梱包・保管から国内外の輸送までワンストップで対応し、長年の実績と専門スタッフによる的確なサポートでお客様の国際ビジネスを力強くバックアップします。
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